PTSD まとめ

 

■ 通常体験を超えた出来事によって生じる殆ど全ての人に著しい苦痛となる体験(トラウマ)。
生命や身体的安全、生理・心理への重大な脅迫。だれでも、突然に、どこかで、理由なく。

 

■ 心理的反応 こころは回復の為に活動性を高める
侵入・再体験 (いろいろなことが思い出されてくる) 回避無感覚(何も感じなくなる)
体験に関連する事柄を避ける努力 場面を思い出すことが出来ない
苦痛な夢 興味の減退 ・ 感情範囲の縮小
あたかもそこにいて体験しているように感じる 未来が縮小した感覚
孤立感 ・ 疎外感
明らかになることへの激しい苦痛

 

■ 生理的反応 身体は回復の為に活動性を高める (生理的過剰覚醒)
敏感性 除反応 情動性の高まり 不眠・過剰性活動 ・・なのに・・・出来ない(解離)
激怒 集中不可 過剰な警戒心 過度な驚愕反応 起想関連場面での発汗

 

※ 脳は自分を守るために回避・無感覚としている。解決の準備が整うと侵入・再体験が生じる。(リフレーミング)
※ 心理的に大変な時は、生理も何とかしようと自分を守る戦いに入っている。眠れないし、食べられない。
それよりも覚醒続けることにエネルギーが使われる。(リフレーミング)

 

 

■ ユニバーサル反応(一般的な反応)

 

PTSD反応・症状と関連するテーマの明確化。

PTSDが生じる事(自然で正常な反応)についての理解と確認。

PTSDの反応・症状は軽減することの理解と確認。

 

 

1)一次:

・再体験 ・回避 ・麻痺 ・過覚醒

 

2)二次:

・罪悪感 ・恥辱感 ・自己評価低下 ・自己統制力の喪失感 ・親密さ/関心の喪失

・記憶の再活性化

 

3)出来事、苦痛、身体的反応、考え、回避反応との関係

遠い過去に被害を受けた場合、被害以前の生活実感が薄い。何かをしないように心がけていることが、トラウマの想起刺激の回避と認識されていない。回避行動を好み、習慣、ライフスタイルの問題と捉えていることも多い。

 

トラウマとなる出来事の体験後に起こることの多い一般的な反応について。

トラウマとなる出来事の体験後に起こることの多い反応について。

 

1) 恐怖と不安、緊張

危険な目に逢っているときには、自然に不安になります。トラウマとなった出来事が終わった後にも、長い間不安が続く人も大勢います。不安が長く続くのは、ご自身を取り巻く世界についての見方が変わり、安全についての感じ方が変わり、悲観的になっている場合に起こります。トラウマとなった出来事・体験を想い出すと、恐怖が込み上げてきたり、不安な気持ちになると思います。また、時には何の前触れもなく起きてくる場合もあります。不安を引き起こすきっかけや手掛かりとなるものには、場所・時間・特定の匂いや物音、トラウマを想い出させるような特定の状況などがあります。どのような時にご自身が不安になるのかについて、関心・注意を払ってみると、不安になるきっかけや手掛かりを発見することも出来ます。すると、前触れなく起こる不安と思われていたものが、実は、トラウマを想い出させるきっかけや手掛かりによって引き起こされていることが実感されること、発見できることがあります。

 

  1. a) トラウマの記憶がいつまでも再体験される。
  2. b) 気持が張り詰めていて、容易に驚く、動揺する。

 

 

2) 再体験

トラウマとなった出来事・体験について考えたくないのに考えてしまう、そして、それを振り払う事ができなかったり、出来事がもう一度起こっているかのようなフラッシュバックを体験したり、悪夢を見るなど、日常的な体験とは相当に異なるショッキングなものを整理することが出来ない為に、その整理をしようとするかのように、心は自動的に記憶を繰り返し呼び起こし続けます。フラッシュバックなど、自動的侵入的に生じるので、ご自身の感じ方、考え、体験を自分の力で制御できないと思われる方もいます。フラッシュバックは、何らかのきっかけにより生じる事もありますが、多くの場合、脈絡なく突然に生じます。また、トラウマの再体験がフラッシュバックや悪夢ではなく、強い感情やものの見方として現れる事もあり、自分を苦しめる考えや感じが続く事があります。

 

 

3) 集中力の低下

集中して本が読めない、会話についていけない、思い出せない、物忘れ、周囲の状況に注意が向かないなどが起きると、動揺したり、自身の気持ちが制御できないなどの心配が生じます。集中難は、トラウマの記憶や感情が意識に侵入して起きる場合もあります。また、覚醒亢進というPTSDの反応・症状に一部から生じることもあります。

 

 

4) 過覚醒

びくびくする、そわそわする、震えたり、驚きやすくなる、集中できなくなる、眠れなくなるなど、覚醒が高まった状態や焦燥感が起こります。覚醒が続き、特に眠りが浅い時には、我慢が出来なくなる、イライラすることもあります。覚醒反応は、危険から身を守る為の「戦うか逃げるかの反応」により生じています。アドレナリンが分泌され、必要な多くのエネルギーが生み出され、常に身体は警戒状態(発汗、動機など)として、攻撃に反応できるように準備をします。覚醒状態の高まりは、本当に危険な状態の時は役立ちますが、実際に危険がなくなった状況においても、長い間、警戒状態と不快が続くという問題があります。そして、危険に対してのもう一つの反応が、フリーズ(凍りつき)、この反応はトラウマ体験の最中に起こる事もあります。

 

 

5) 回避

トラウマによる苦痛を何とかしようとする際に、通常行われる方法が回避です。その場所に行くことを避けるなど、その出来事を想い出す状況を避ける。或いは、夜に被害を受けた方が夕方になると外出が出来ないなど、直接には関係のない状況を避けることもあります。また、不快な気持を減らそうとして、辛いことを感じないように、考えないようにする、気持を抱かないようにしたり、或いは、認めないようにすることもあります。

この方法を繰り返した場合、感情麻痺が起こる事があり、恐怖感の他、心地良さや愛情を感じなくなる、人々から離れている感じや自分が切り離されている感覚、周囲のものが遠くに感じられることがあります。更に心理的ブロックにより、トラウマとなった出来事について想い出せない事や、記憶の一部が抜ける事(断片化)があります。記憶障害が起きることもあります。

 

 

6) 怒り・苛立ち

多くの方は、怒りっぽくなった、攻撃的になった、イライラしていると感じます。温和で怒りを感じる事に慣れていない人は、こうしたご自身の変化をどうしたらよいか分からなくなったり、怖いと感じることがあります。大切に思う人に怒りや苛立ちを感じる事が理解できず、混乱することがあります。イライラが続くことに腹が立つことも起こります。また、世の中に対しての不当性、不公平感を強く感じて、怒りが生じることがあります。そして、多くの人が自らに怒りを向けています。自らに向けられた怒りの感情は、自責感、罪悪感、無力感、抑うつへと向かいます。

 

 

7) 自責・恥ずかしさ

ご自身を責めたり、自分を恥ずかしいと思うことが多くなります。やったことや、やらなかったことについて、ご自身の落ち度だと感じられる方が少なくありません。被害を受けた自分が悪いと考える人もいます。生き延びる為に、普段はしない行動をした自分を恥ずかしいと想う事があります。時には、周囲の人や友人、家族や知人から非難、責められることもあります。罪悪感や恥ずかしさの為に、誰かと話をしたり、何かをすることを回避することがあります。ご自身を責めるのは、起こったことに対して責任を持とうとされているからだと思われます。そのことによって、ご自身をしっかりとコントロールしている感覚が生じることもありますが、一方で、無力感、落ち込みにつながる事があります。

 

 

8) 悲しみ・落ち込み

反応として、多くの場合、悲嘆や落ち込みが起こります。悲しみ、絶望、諦観(仕方がないとあきらめ)、泣くことも多くなります。希望を持てないと感じたり、これまでの楽しみ(友人との語らい・趣味・遊び)や仕事、人への関心をなくされることもあります。将来がどうでもよくなったり、人生の価値がないと思われることもあります。何をしてもつまらなく感じるかもしれません。自傷や自殺を考えることもあります。トラウマによって、世界観やご自身を見る見方が大きく変わった為に、失われたものについての悲しみ・嘆きは、ごく自然に起こる反応です。

 

 

9) 自己イメージ・世界観の変化

トラウマを受けた後、自分のイメージや周囲の世界の見方は、しばしば、ネガティブに変化します。多くの人が、自分が駄目な人だと思ったり、「自分が悪いので悪いことが起こった。」「自分が何とか出来ればよかったのにできなかった。」と考える事が多く、また、他人を否定的に見るなど、誰も信じられなくなることもあります。自分の感情も身体も、自分の命も自分では制御できないという想いを強烈に感じたかもしれません。「もうだめだ。」と感じる事もあります。これまで世界は安全だと思われていた人も、突然、世界は非常に危険だと想うようになり、これまでひどい経験をしてきた人は、世界はやはり危険で、人は信用できないと確信することもあります。すると、人への緊張、不信感など、打ち解けた付き合いが難しくなります。

 

 

10)性的関係

性的な関係においても影響がでます。性的な気持ちになれない、無関心や恐怖感など、性的な関係が持ち難くなることがあります。感情的な親密な関係、性的な親密な関係になると、自分が無防備な感じが甦る、不快になる事があります。フラッシュバックが起きる、強いストレスを感じる事もあります。また、抑うつ状態からの影響による場合もあります。

 

 

11)アルコール・薬物

トラウマ体験の後に、アルコールやカフェイン、タバコ、シンナー、その他の薬物など、物質(substance:精神に作用する化学物質)の摂取量が増えることがあります。その事が、回復を遅らせる要因となる場合(逆効果:不安が高まる)、また、増加自体が問題を生じさせることがあります。

 

上記の反応は相互に関連して強化される事があります。トラウマ後のご自身の変化を確認し、治療の中でそれらをプロセス(処理と整理)してゆくことで、反応。症状が緩和されます。

 

 

■ 中心となる課題

・  自己無力感

・  離断感

 

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